「疾風に折れぬ花あり」(中村彰彦著)第十二回「お身代わり その二」掲載!!


お盆の時期、皆様いかがお過ごしでしょうか。

私が住んでいる地域は、お盆は7月なので、ごくごく普通の週末を過ごしています。

改めて大人になってふと考えてみると、お盆というのは、いい習慣ですよね。年に一度、祖先が子孫のもとに還ってくる……。 本来は盂蘭盆会(うらぼんえ)、仏教的行事ですが、その由来や意味をよく知らなくても、「おばあちゃんが帰ってくるよ」なんて子供のころから言われて、仏壇の前で手を合わせて来た人が多いのではないでしょうか。

そして、少し思い出話をしたり、知らない大叔母の話を聞いたり、めったに会えない親族にあって近況を報告したりする。

自分がここにいる少し前の小さい「歴史」を、いろんな軸で実感するようなとき、ともいえるかもしれないですね。

さてさて。そんなわけで。

早いものでもう一月が経ちました。

お手伝いさせていただいてます中村彰彦先生の「疾風に折れぬ花あり」が掲載されております『文蔵』9月号が発売されておりますよ~! 20140817

武田信玄の末娘、松姫が主人公の、本作。

戦国時代だから仕方ない、のかもしれませんが、それにしても物語が始まってからずっと畳みかけるように押し寄せる、怒涛のような不幸の連続には、息つく間もありません。

繁栄を極めた武田家ですが、信玄が急死してから一気に滅びの道をひた走ります。

そして瞬く間に織田家に滅ぼされてしまった甲州武田家。松姫さんはまだ21歳ですが、兄たちから「生き延びて武田家の血を残してくれ」と、幼い姫たちを託され、隣の武蔵国へ逃げ落ちました。そして死んでいった武田家の人々を弔いたいと出家し、「信松尼」と名乗るようになりました。

信松尼さんの望みは、仏道に勤しむことで、死んでしまった親兄弟、そして祖先を弔い、あの世でちゃんと成仏させてあげること。言い方間違ってるかもしれませんけど、あるい意味「ひとり盂蘭盆会」です。そして、もう一つの願いは、手元に残された姪たちを無事に育て上げること……

しかし、この細やかな願いも、血筋もとっておきで美女である松姫さんです。なかなか世間がほっといてくれない。

そして、問題の徳川家康さん(女好き)が登場。

前回では、女狩りをして、武田家の家臣だった人物の未亡人だけでは飽き足らず、ついに松姫さんの存在に気付き、追っ手を差し向けてきました。

それに気付いた松姫さんの侍女・お竹さんは身代わりを志願、武田家ゆかりの女性という触れ込みで、家康さんの側室になりました。

これでもう大丈夫かな、と思いきや、そうは問屋が卸さない。

やはり、本当のお姫さまである松姫さんを落としたいわけです。「武田家と徳川家の血筋を兼ね備えた子供が欲しい」という建前がありますけど、正直、それは本当に建前ですよ。ねえ。

そして、またもや使者が訪れます。今度は直球に聞いてきます。「ここにおわすは、信玄公の五女、松姫さまではないのか」と。

ここで、腹を決める家臣一団。自分たちが仕えているのは松姫さんであることを認め、ある思い切った「大ウソ」をつくのですが…

まさに、捨て身の大ウソ、いや奇策です。その奇策とはいったい~!??

…ぜひ、誌面でご確認してくださいまし!

(むとう)

「疾風に折れぬ花あり」(中村彰彦著)第十一回「お身代わり」掲載!!


先日、大学時代の友人たちと久しぶりに会ったときのこと。

途中までは、のほほんと「いや~、みんな若いよ、変わらないね~」なんて、ちょっと余裕のある大人発言を機嫌よく繰り返しておりましたが、後半、なぜだかみんなで卒業アルバムを見始めて以降、すっかり酔いがさめました。

すっかり忘れておりましたが、私が通っていていた大学は、皆さん育ちがよく経済状況もよく、「綺羅の空間」だったんです。

そんな中で、私は「醜いアヒルの子」。きれいな人たちの中で、呆然とたたずんでいた、というかんじだったんですよね。

しかし、あまりにかけ離れると、嫉妬など浮かぶ間もなく感心してしまい、心から「すごいなあ」「育ちがいいってのはこういうことなのか」と思っていたのでした。

卒業アルバムを見ていると、そんな風だったことが一気に思い出され、自分の太ってパンパンな写真を正視できず、酔いがさめると同時に、周りの女の子たちの美人比率の高さに、改めておののいたのでした。

こんな中で過ごさなくちゃいけなかったなんて、わたしって不憫。っていうかエライ。よく頑張った!と、かつての自分に言ってあげたい気持ちになりました。

それはともかく。

当時、観察していて面白かったのは、美人であるということは必ずしもいいことだけじゃないんだな、ということでした。
誰が見ても美人という子は、ちょっと敬遠されたり、あるいは今風に言うと「トロフィーワイフ」じゃないですけど、肉食系な男のひとたちにとっての勲章みたいな、「戦利品」のようになっていたりして…。だから、自分が選ぶ前に男性チームのほうで候補者を決めていて、なんとなく押されてその人と付き合ったり。まあ、「アヒルの子」チームの人間からしたら羨ましい話なんですけど、結果的にけっこう大変な目に遭ったり、幸せになっているわけでもないのを見ていて、「美人ってのも大変だわねえ」と、これまた感心していたのでした。

20140722

さて、前置き長くてすみません。なぜこんなことを思い出したかというと、毎月お手伝いさせていただいております連載「疾風に折れぬ花あり」の主人公、武田松姫さんは「白鳥チーム」のお嬢様だなあ、と思ったからなのです。

松姫さんのお母さんは血筋もよく甲州一の美女と呼ばれたようなひとでしたので、また本人も大変な美人だっただろうと思われます。そして、お父さんの信玄は、名族・甲州武田家の嫡流ですから、本当にもう非の打ち所のないスーパーお嬢様。

これまで通りでいれば、蝶よ花よと大切にされ苦労など知らずにそのまま生を追えたかもしれませんが、そこはなんといっても戦国の世。飛び切りのカリスマだった父・信玄公が亡くなってしまってから、武田家は一気に斜陽の道を歩み、ついに織田信長に滅ばされてしまうのです。

松姫は、兄たちから「生き延びて武田家の血を残してくれ」と、幼い姫たちを託されて、武蔵国へ命からがら逃げ延びます。そして、その武蔵国の八王子で、死んでいった武田家の人々を弔いたいと、髪を下ろすのですが…。

静かに暮らしたいと願う松姫の思いとは裏腹に、美女であり、身のこなしから間違いなく生まれもいいということで、周囲にその存在が知られてしまうのです。

まさに、衣通姫(そとおりひめ)。隠しようのないその存在感…。

今月号では、武田家ゆかりの女性を自分の側室に迎えたいと、女狩を始めた徳川家康配下に、ついに居場所をつかまれてしまいます。

ただ、救いなのは、ここにいる美女は「武田家ゆかりの人だろう」という推察だけであって、信玄の末娘・松姫さんそのひとだとはばれていないのです。

徳川家康の配下が、八王子の庵を訪ね、「武田家ゆかりの女性がここに入るだろう」と言ってきたとき、松姫さん改め、信松尼の家臣の皆さんは、どうにか守り通そうと考えますが、それはなかなか難しい。確かにここには「品があって美しい女性」が暮らしているということは、近辺でも有名なはなしだったわけですからね。

苦肉の策として、松姫さんの存在は伏せたまま、侍女として一緒に暮らしていた二人の女性の名前を上げます。「血筋」のものではないですけど、武田家に長年仕えてきた人たち、つまり「武田家関係の人」ということで、その名を挙げたのでした。

そしてそのうちの一人、お竹さんと、家康配下の人が面会します。すると、これまた大変な美女です。武田家嫡流の女性ではないけど、この美女ならいいんじゃないの?…と思ったからか、その後正式に「奥向きに迎えたい」と言ってきました。

信松尼さんは躊躇します。つまりこれは自分の「身代わり」。お竹さんを差し出すようなまねは…ということですね。

しかし、そこは戦国時代の武家の女性です。お竹さんは自分から「お身代わりになります」と言うのです……。

歴史上のことを仮定してもしょうがありませんが、もし、このお竹さんだって十人並の普通の女性だったら、たぶんこんなことにはならなかったような気がしますし、そもそも、松姫さんが野に隠れてしまうような地味な外見だったら、周囲のひとたちにもこんなに大々的にばれずに、家康にもばれずに済んだんじゃないか、と思うわけです。

いやはや……。
美人って大変ですよねえ!?

私がご紹介を書くと、なんとも品がなくなってしまいますが、本当は中村先生ならではの気品あふれるお話です。ぜひ本誌面をご覧ください!!

(むとう)

「疾風に折れぬ花あり」(中村彰彦著)第10回「髪を下ろす日 その二」掲載!


月日が経つのは恐ろしいように早いですね。もう上半期終わっちゃいましたよ~!!!

早くも下半期。7月に入りました。皆様いかがお過ごしでしょうか。

さて、毎月文芸雑誌『文蔵』で掲載されております、「疾風に折れぬ花あり」第10回目のご紹介です。大きな声では言えませんが、先月バタバタしていて、9回目をご紹介する前にもう10回目掲載号7月号が出てしまったのです^^;;。とほほ。
20140709

さて、「疾風に折れぬ花あり」は、戦国時代のお話。

武田信玄の末娘・松姫の苦難に満ちた生涯を、あの中村彰彦先生が小説に描く…という、お手伝いしている立場の私が言うのもなんですけども、面白いに決まってる、というお話なのです。

実際、武田家滅亡から、甲州脱出を経て、現在お話は武蔵国八王子に身をかくす…というところまで来ておりますけれども、中村先生ならではの史料の読み込みから生まれた新解釈が随所にみられ、歴史好きにはたまらない内容になっています。

さて、前号で、武田家の死んでいった人たちを弔うため、まだ20代前半の美女である松姫さんは、出家。彼女を導いたのは心源院の卜山和尚(ぼくざんおしょう)というひとですが、和尚の温かい心配りで、無事髪を下ろし、「信松尼(しんしょうに)」という法名を授かります。

よかったよかった。これでようやく静かに暮らせるのかな?、と思いきや…

そうや問屋がおろしません。やっぱり、世の中はほっとかないわけですよ。

織田信長が本能寺の変で、明智光秀に謀殺された後、甲斐国は徳川家康の支配下に置かれるようになりました。

徳川家康というと、「鳴くまで待とう時鳥」のたとえなんかで、どちらかというと耐え忍ぶ、というか「真面目」な印象が強い人だと思います。

でも、それはお仕事の面の話であって、女性面になるとかなりの好きものだったといえるわけですね。

先生は、それを「裾貧乏(すそびんぼう)」という言葉で表現されています。

なるほど、そんな表現があるんですね。浅学ゆえに存じ上げませんでしたが、奥ゆかしくも、的を得た言葉!日本語って素晴らしいなあ。

さてさて。

「裾貧乏」、つまりは相当の女好きだった家康さんは、甲州に入ってから「女狩り」をはじめます。とりあえず、武田家旧臣の未亡人を側室にし、それだけでは飽き足らず、武田家の血筋の女性はいないか家臣に捜させるのです。

はい。そうです。気づいちゃうんですね、松姫さんの存在に!!

当時の考え方としては、松姫さんが家康さんの側室になる、というのはそんなに悪い話ではありません。武田家の嫡流を徳川家の中に残す、ということもできますし。

しかし、松姫さんは前号で出家してますからね。彼女は仏門に入って生きていくことを決めています。ですから、ここで家康さんに発見されることは、まったく彼女の望まない生き方を選択させられてしまうことになるわけです。

さあ、この難所を松姫さん改め信松尼と、その家臣の皆さんはどう切り抜けるんでしょうか!

……ぜひ、本誌面をチェックしてみてくださいね~!

(むとう)

「疾風に折れぬ花あり」(中村彰彦著)、第7回「天の咎め」掲載!!


昨週、中村彰彦先生の「疾風に折れぬ花あり」、第7回目掲載の『文蔵』2014年4月号が刊行されました。
20140327『文蔵』もすっかり春の装い。桜の花と三毛猫とアリのイラストが、春気分を盛り上げてくれます。

さて、そんなうららかな雰囲気とは裏腹に、「疾風に折れぬ花あり」は、どうにもこうにものっぴきならない状況が続きます。
物語は現実世界と同じ、3月。旧暦ですので、今の暦でいうと4月の出来事です。そんな春のさなかなのに、前号の回で武田家当主・勝頼さんが天目山の麓で自刃、ついに名門武田家嫡流は滅んでしまいました。

さて、今回は勝頼さんが死に、織田軍による残党狩りが始まる……というところからお話が始まります。

戦国時代、ちょっと都合のいい立前かもしれませんが、敵方に味方すると決め、そのために今の主を裏切ることを「返り忠」と呼びました。
なぜ「忠」かというと、次の主のための「忠」なわけですね。

当時は、そのようなことがよく行われていましたが、織田軍は「返り忠」を許さず、織田軍に味方したものでさえ、徹底的に殺してしまいました。
また、一種の聖域でもあるはずの、お寺も例外ではありませんでした。織田信長は比叡山焼き討ちができてしまうような人ですからね。武田家縁のお寺も難癖をつけてどんどん焼き討ちしてしまいます。

本編の主人公である、信玄の末娘である松姫さんも、見つかったらタダではすみません。さてさて。松姫さんの運命やいかに……!!!

今回も緊張感あふれる展開です。ぜひお手に取ってみてくださいね!

 

 

「疾風に折れぬ花あり」(中村彰彦著)、連載第6回掲載!!


昨週末、中村彰彦先生の「疾風に折れぬ花あり」、第6回目掲載の『文蔵』2014年3月号が刊行されました。
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奇しくも、14日の大雪の翌日。本書の舞台にもなっている甲府や勝沼などのある、山梨県は本当に大変なことになっています。雪のために陸の孤島と化している、と…。

私はテレビをあまり観ていないのでわかりませんが、キー局などでのニュースがとても少ない、と友人から聞きました。心配ですが、とにかく今日、また雪が降らなくて本当に良かったです。除雪作業はマンパワーでどうにかするほかないので、限界があります。とにかく、気温が上がって早く溶けてくれることを、遠くから祈るばかりです。

さて、今回のお話は、いよいよ、いよいよ武田家は…です。

武田家の最後の良心というべき、仁科盛信(にしなもりのぶ)は、前号見事に武田武士らしい死にざまを見せました。
そして主人公の松姫さんは、幼い姪っ子の姫たちを連れ、向嶽寺というお寺で、甲斐国脱出の機会をうかがっている…という状況です。

そして、武田家当主の勝頼さんは…。

…最後までひよりましたですよ。重臣の勧めで新府城という本城を脱出し、重臣の城まで逃げて再起を図る、と決めて、新府城に火を放ちます。しかし、この判断はいったいどうだったんでしょう。戦術に詳しくない私のようなものからしても、この一手はやばいんじゃないの?!?と思いましたです。

だって、織田信忠軍はすごい大軍ですよ。家臣たちがどんどん自分から離れていった結果、勝てそうもなくなってるところに、勧められたからと言って家臣の城に逃げ込む、だなんて。なんか無理ですよね??

さて、さてさて。

もう結論は出てしまっておりますが。あああ、武田家、悲し…。

とはいえ、最後の最後には、勝頼もはらを決めます。はらをきめてからの勝頼は、いかにも戦国の武士らしいふるまい。そばで戦った家臣たちもまた、いかにもな見事なふるまいであったことを、先生の筆は教えてくださいます。

いやあ。

なんともいえぬ、余韻の残る今回のお話です。

ぜひ、お手に取ってみてください!
人生の「選択」とは、なんとまあ難しいものか、と改めて考えさせられます!

(むとう)

 

 

「疾風に折れぬ花あり」(中村彰彦著)、連載第5回掲載!!


年が明けたと思ってましたら、1月ももう下旬に入りました。早いですねえ。…って今年の年末年始にも同じことを書いてしまう予感がしますが(笑)。

さて。

昨週末、中村彰彦先生の「疾風に折れぬ花あり」、第5回目掲載の『文蔵』2014年2月号が刊行されました。
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今回の号は、いよいよ主人公、武田信玄の末娘・松姫さんの最愛のお兄さん、仁科五郎盛信(にしなごろうもりのぶ)が、壮絶な戦死を遂げてしまいます~~!弱冠26歳!!

仁科盛信は、武田信玄の五男なのですが、4男の異母兄・勝頼が家を継いだ後も、勝頼を立て武田家に尽くし、最後には世の誰もが「さすが武田武士よ」と賛称するであろう見事な死に方をしました。今号でははその様子が見事に描かれています。
#ちなみに、言うまでもありませんが、私は尋常でなくこの五郎さんに入れこんでます^^。先生の描かれる五郎さんがほんとかっこいいんですよね!

今号の原稿を拝見した私は、先生にため息交じりに何度も申しあげてしまったのですが…。

もし、この五郎さんが武田家を継いでいたら、武田家は滅びなかったのじゃないかと思うのです。それぐらい見事な武人で、家臣にも愛されました。

血筋も勝頼と比べて申し分ないのです。お母さんは側室ですが、武田家の親戚衆・油川氏の出であり、いろいろと問題を生じやすい諏訪氏出身のお母さん(側室)を持つ勝頼と比べてみたら、むしろ圧倒的にいい感じなのです。

何しろ、諏訪氏と武田氏というのは因縁がありすぎて、勝頼のお母さんを側室にする、というのは武田家家臣みな反対したと言います。なので、信玄にとって勝頼は「諏訪氏」を継がせるときめられていた息子でした。武田氏を継ぐ息子は長男がいたので、特に問題なかったんですよね。それでも。

勝頼、という名前を見ればわかりますが、武田家の男子が持つべき「信」の字が入っていません。「頼」は、諏訪氏の通字で、勝は、幼名からとったそうでですけど…、ちょっと変わってる。

普通に考えたら、「信頼」か「頼信」と名乗るでしょう。どうして「信」の字を入れなかったのか…

第20代続いた甲州武田家のなかでも唯一「信」が入っていない当主です。何だろう、この違和感。

そして、この後、その勝頼によって名門武田家は滅びるのです。うーむ…。

と、ちょっと余談になってしまいましたが、一度「滅び」へと舵を切ってしまった武田家の、雪崩を打つように止まらない様子が今回も五郎さんの死でもって、見事に描写されています。

ぜひ、お手に取ってみてくださいね!

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さて、連載のお話はここまでなのですが、

なんとこの『文蔵』、今回の号で100回を数えるんだそうです!すごい!
おめでとうございます~!

月刊誌ですから、年に12回。としますと9年目ですよね
出版不況といわれるこの時代にこの着実な歩み…。ほんとにすごい。

そんな記念すべき号の特集は「働く人が元気になる100冊」です。今回も情報たっぷり、インタビューたっぷりで読み応えすごいですよ~!

(むとう)

「疾風に折れぬ花あり」(中村彰彦著)、連載第4回掲載!!


さて、早いもので、中村彰彦先生の「疾風に折れぬ花あり」、第4回目掲載の『文蔵』2014年1月号が刊行されました。

雑誌はひと月早いですからねえ。もう来年の名前が付いた巻が刊行されるなんて、…何やら気が急いてまいりますね。
文蔵2014年1月号さて、今回の掲載第4回目では、武田家がいよいよのっぴきならない状況になってきてます。主人公の松姫さん(信玄の末娘)がいよいよ新府城を落ちて、これから始まる逃避行への序章…。

今回のエピソードで私が大好きなのは、松姫さんが城を落ちる途上、異母兄で盲目の龍宝さんに、最後のあいさつに行くところ。

この龍宝さんは、武田信玄の次男で正室の息子。生まれつき盲目だったので半分出家した形をとり、家督は継げなかった人なのです。先生の描かれる龍宝さんの、なんともいえぬ優しく無邪気な様子がたまらない!末の妹である松姫さんを慈しむ様子がまたいいのです。

優しい人ですが、その心はやはり武田の男です。武田の滅亡を前に、一寸の揺るぎもありません。

それにしても、中村先生はこういう人を描くのが、また本当にお上手です!

「見事」な生きざま。

今回のお作の中にも、そうした見事な人たちが次から次へと出てきます。もちろんそれに対して、「わあそれはないわあ」と思う人物も登場してきます。その最たる人は、当時の武田家当主である勝頼なのですが…

…と、あまり熱を入れて書き出してしまいますと、せっかく楽しみにされてる方に申し訳ないので、この辺にしておきます。今回の掲載話も、めちゃくちゃ切なくて、面白いお話ですよ!!
ぜひお手に取ってみてくださいまし!

***
さて、そうそう、『文蔵』のご紹介もちょっと。今回の文蔵はいかにも年末年始にふさわしい特集です。

「書店員が最も惚れた小説」

ですよ!なんだかとっても気になりませんか??!

書店員さんへのアンケートをもとにランキングではなく、「推薦する一冊」という見せ方。本の利き手である書店員さんが個人的思い入れを込めてお勧めする本ですから、そりゃ面白いだろうと思うわけです。

お恥ずかしいことに、浅学な私は、まったく存じ上げない本も多数ありました。年末年始はこちらで登場している作品をできるだけ読んでみたいと思ってます。

そして、第二アンケートでは「私が注目しているこの作家」。
こちらも、本当に浅学な、そして文藝音痴な私にとって初めて拝見するお名前も多数…。もっと勉強しないといけませんね。ほんと。

 

「疾風に折れぬ花あり」(中村彰彦著)、連載第3回掲載!!


先週、中村彰彦先生の「疾風に折れぬ花あり」、第三回目掲載の文蔵が発売されました!

文蔵は毎月17日発売の文庫型雑誌です。

文蔵
さて、今回もなんと言いましょうか、武田家がまっさかさまに滅びに向かって前進してしまう光景を、私たち読者は見るほかない…みるほかない、…ないんですか??先生!??……という雪崩のような展開です。

前回までは、「…なんかやばい。やばいんじゃないの?」みたいな感じで、どちらかというその「気配がヒタヒタと」にじり寄ってくるような感じでしたが、今号では、それが錯覚ではなく、紛れもない事実であることが描かれていきます。

織田信忠軍との徹底抗戦を決意した、同母兄・仁科五郎盛信に請われて、松姫さんは兄の娘を連れて、高遠城を脱出、当主勝頼のいる新府城(武田の本城)にたどり着くんですが、もうこの新府城さえ安全な場所ではないのです。

ああああ、もう、これはのっぴきなりませんよう!!

どこまでも、読者な発言の止まらないワタクシ。編集者としてちゃんとお役に立てているかどうか大変疑問ですが、とにかく、中村先生の今回のお原稿も素晴らしいです!ぜひ、お手に取ってみてください!

(むとう)

 

「疾風に折れぬ花あり」(中村彰彦著)、連載第二回掲載!!


中村彰彦先生の「疾風に折れぬ花あり」、第二回目掲載の文蔵が発売されました!
文蔵は毎月17日発売の文庫型雑誌です(雑誌型文庫というべき?)。
20131019第二回は、いよいよ、武田家がのっぴきならない状況になっていく様子が描かれています。武田信玄は戦国の雄であり、また、代々関東の名家であっても、滅ぶ時にはこんな風になってしまうのか…というそんな風に思ってしまう展開…。

武田信玄の末娘・松姫が主人公の本作品。滅びに向かって転げ落ちていくようなお話の中で、今回も匂い立つような美しさです。
なんといいましょう、浮世離れしているというか、過酷な運命を背負わされる人の、ただ人ではない気配……とでも申しましょうか。滅びの中の光と申しましょうか、いや、泥の中の蓮花というほうがあっているかも…。

彼女の同母兄の五郎盛信もまた、美しい。信玄の死後統領になった異母兄・勝頼の愚行が滅びを引き寄せたと理解しながら、しかし、武田家の男として、武将として、信念を貫くことを決めてしまいます。そして妹には「生き延びてほしい」と後事を託すのです。

歴史に「もし」はあり得ないのはわかっていますが、「もし」、五郎盛信が武田信玄のあと、武田家を継いでいたら、歴史は大きく変わったことでしょう。そんなことを強く強く思ってしまう今回のお話。
ぜひ、皆様もお手に取ってみてください!

(むとう)

『疾風に折れぬ花あり』(中村彰彦著)連載スタート!



文蔵

PHPさんより発行されている文芸雑誌(文庫)『文蔵』さん10月号にて、中村彰彦先生の新連載『疾風に折れぬ花あり』がスタートしました!!

中村彰彦先生といえば、NHK大河で改めて注目が集まっている「会津人」をはじめ、人間の生きざまをえがき続けてきた方。私は、編集者である以前に単なるファンとして、中村先生の著作はずっと拝読してきましたし、先生のえがき出される「見事な人間」を、自らの目標(おこがましいですけど;;)としてきました。
ありをりあるでも、「レキベン」で先生の『二つの山河』や『名君の碑』についてアツく語っちゃったりますし

そんな自分が、なんと、その憧れの先生の新連載のお手伝いをさせていただけることになったのです!本当に嬉しいです!!
お仕事くださったN編集長には本当に足を向けて寝られません!

今回の物語は戦国時代、武田信玄の娘・松姫(信松尼)が主人公。松姫は、武田・織田の蜜月時代に、信長の嗣子・信忠の許嫁でしたが、破談。その後は結婚せず、武田が滅びた後、姪たちを立派に育て上げ、武田旧家臣の精神的支柱になった見事な女性です。会津の藩祖・保科正之を守った人でもあります。そんな女性を、中村先生がどんな風に描かれるのか…。私はワクワクしながら先生の原稿を待ちました。

そして、先月半ばごろ。いよいよ先生から生原稿がファックスで届き、それを拝読した瞬間……。

うおおおおおおおお、という感動が身を駆け巡りました。

匂い立つような松姫さんがそこに立ち上がっておりました。そして、戦国時代の名族武田家の家中にあっただろう、空気。私は一気にその中へ引き込まれてしまいました。

これから、毎月この感動を誰よりも早く味わうことができるなんて!
本当にこれこそ編集者の特権です。なんて楽しいお仕事なんでしょう。

ぜひお手に取ってみてください~!

ちなみに、掲載されております『文蔵』は今号がなんと8周年記念!!毎月17日前後発売です。