file.31 虎屋の「あんみつ」


いちにちいちあんこ

あんこが好きだと言いまくっているので、今度スイスに移住してしまう友人Kさんから「一番お勧めはなに?」と聞かれました。スイスに行く前に食べてみたいとおっしゃるのです。

そ、それは。責任重大!
嬉しくも悩ましいお題ですよね~~。

あんこと言っても、あんこを使ったお菓子ということで考えますと、種類がたくさんありますし、豆の種類もいろいろあるし…

ううう~~ン、ううう~~~ン、と考えておりましたら、はたと思いついたのが今回ご紹介する「虎屋のあんみつ」です。
さっそく、Kさんご夫婦と食べおさめに行ってきました!

虎屋はあまりにも有名でお店もたくさんありますし、皆さん今更?とおっしゃるかもしれませんが、いやあ、やっぱり500年以上の歴史は伊達じゃありません。

虎屋さんは、創業は室町末期。もともと京都で御所にお菓子をおさめている和菓子司さんでしたが、明治時代に天皇家が東京に遷座された時、東京にも進出してきたんですよね。

虎屋さんの和菓子は、その歴史そのままという気がします。京都和菓子の正当さを守りながらも、東京らしい武家文化的な潔さを感じさせる「きりっとした味」。

赤坂に本店があり、私はこちらであんみつをいただくのを「ご褒美」と呼んでます。
あんみつは約1200円。ちょっとお高めですね。普段、私が食べるあんみつは700円くらいまでのもの。そんな私にとっては、ちょっと贅沢な逸品なのです。

今回は、六本木ミッドタウンの菓寮へいってきました。
六本木ミッドタウン店の良さは21時までやってるというところですね。そして平日だとかなりすいていて、ゆったりと過ごすことができます。

このあんみつは1200円払って食べる価値のある素晴らしいあんみつなのです。それがこちら!!あんみつひゃ~うつくし~~!
虎屋さんのあんみつを見ると、あんみつも「和菓子」だということを再認識しちゃいますね。

あんこが美味しいのはもちろんですが、寒天以外にも、同じようにカットされた水ようかんやキビ、やゼリー、金時豆にえんどう豆…と、その一つ一つに「仕事」を感じさせてくれます。

あんみつもういうまでもありませんが、このこしあんの美味しいこと!

黒蜜も本当に美味しいし、金時豆とえんどう豆がまた美味しい!オプションで花豆3粒を100円で入れてくれるサービスもありますよ。オプションといえば、白玉とアイスクリームも100円プラスで入れてくれます。

いっしょにいったKさんご夫婦も、とても喜んでくださいました。「パリの虎屋に食べに行く!」と意気込むKさん。そうそう、虎屋さんはパリ展開されてますもんね。

チェーン店展開されてますけど、虎屋さんは味を落とさないんじゃないかな~。なんて思います。ぜひ皆さんも、お近くの菓寮にいってみてください!カキ氷やほかのものもはずれなしですよ!!

ちなみに、赤坂本店では、「虎屋文庫」という菓子資料館も併設しており、年に何度かですが展覧会を催してます。私のお勧めは、こちらで日本のお菓子の歴史に触れて、菓寮で一服、です。ちなみに、今年は11月一日から「和菓子の贈りもの」展を開催されるそうですよ!!
私も久しぶりに行ってみる予定です。

虎屋
http://www.toraya-group.co.jp/main.html

虎屋六本木ミッドタウン店
http://tabelog.com/tokyo/A1307/A130701/13037370/

【仏勉】仏画・曼荼羅の世界を楽しみたい



仏像は好きだけど仏画はちょっと苦手、と思ってました

仏像は大好きでよく観仏に出かけておりますが、平面的な方向は大変弱いのですね。

よく考えたら、これって不思議なことですね。普段でしたら絵も大好きですからよく観に行きますし、自分でも下手な絵をよく書いています。…それなのに、仏教に限っては、絵画が苦手、とは。これいかに。

実は、これには理由があるんです。

まず理由の第一は、「すごく難しい感じがするので苦手」。特に「曼荼羅」となると、複雑すぎます。ざっくり金剛界・胎蔵界の二つの世界を表わす曼荼羅がある、ということぐらいしか知りません。

そして第二の理由は、これまでいいものに出会ってこなかった。ということだったみたいなのです。すごくシンプルな理由。

このことに気が付いたのは、昨年開催された『ボストン美術館 日本美術の至宝』展でのこと。さすが、フェノロサ、ビゲロー、岡倉天心が買い集めただけあって、ま~筋のいいものばかり!
私のような素人にもそのクオリティの高さには、驚愕させられました。特に、仏画のクオリティは思わず声をあげてしまうほど。

「あああ、ここまでふりきってたら私にもわかります~~!」

と心の中で叫びました。

つまり、たいしていい眼は持ってないですけども、振り切って素晴らしいものというのはわかります。2位、3位、4位の差はわからないけど、1位はわかる、みたいな。そんなかんじ。

難しくてもわからなくても、「自分が好きなもの」ができたらこっちのもの
特に『法華堂根本曼荼羅図』(奈良時代)なんてもう!!
これは、東大寺の法華堂(三月堂)に伝わったものだそうで、日本にあったら間違いなく国宝ですよ。お釈迦さんが法華経を説くシーンを描いたもので、こういうものも「曼荼羅」とよびんですね。

法華堂根本曼荼羅図@ボストン美術館像

(『ボストン美術館 日本美術の至宝』展図録P54より引用)

夢見るように美しいお釈迦さんと脇侍の菩薩さんとそのほか諸尊の皆さん。素晴らしいです。

私はこの仏画をはじめ、ボストン美術館所蔵のあまりに素晴らしい仏画群を見てはっきり認識しました。「仏画ってわからない」じゃなくて単に「素晴らしい仏画に出会えてなかったけ」だってこと。

私がふだんから金科玉条?のごとくおもっている「わからなくても何でも、圧倒的にいいもんはわかる!』法則は、やはり有効なのですよ。

こういう体験があると、ちょっとしたフックが自分の中でできてくるので、仏画を見ることが自分にとって意味のあることになっていきます。

このフックというのは、この場合、
「自分にとってすごく好きだと思った『法華堂根本曼荼羅図』」が、自分の好みの核になった」ということを意味しています。これができますと、その定点をもっていろいろものを見られるようになるので、すごく世界が広がるのです。

さて、そんなわけで、根津美術館で開催中の「曼荼羅展」、そんな自分を試す意味も込みでとても楽しみにしておりました。

私のフックは有効なのか??
そして、私にとって仏画はいまだ「難しいもの」の域を出ないのか?

わからないまでも、楽しみたい、これが私の小さな野望だったのです。

(続く)

福田豊文さんの新作『どうぶつの赤ちゃん』、発売!


夏休み真っ盛りです。お盆休みの今週は、特に親子連れを見かけます。私の事務所の近くにある動物園では、ナイトズーも開催しており、大人気。

私もナイトズーに行きたいのはやまやまですが、このあまりの暑さにすっかり怖気づいてまだこの夏は行けていません。夜になっても気温が下がらないのがねえ^^;、どうも…。

そんな折、前の出版社でお世話になった編集の先輩がた、写真家の福田豊文さんが、たまたま近くの印刷工場で印刷立ち合いにいらして、打ち上げに誘っていただきました。

久しぶりの再会、動物バナシに花が咲く!

このメンバーでお話をすると、改めて「生き物って楽しいよな~」と思うのです。生き物の不思議な生態、多様な生の在り方、またそれを追いかける生物好きの皆さんの愛に満ちた面白い行動…(笑)。
福田さんのお写真を拝見すると、その「愛」をバシバシ感じます。よく知っているはずの動物でも、「あ、こんな表情するんだ!」と驚かされます。

そんな福田さんに、新刊を頂戴しました。

どうぶつのあかちゃんばかりを集めているという、反則的にかわいい写真絵本です!
犬や猫、チンパンジーやライオン、虎、カピバラといった動物、全部で25種類!

どのページも可愛すぎますが、私の場合特にこの…
ライオン

(P16-17より引用)

この表情!!!!
子ライオンちゃんが、母ライオンに頼りきっているこの安心に満ちた表情。素晴らしいですよね。そして…
シロクマ

ホッキョクグマさん、ダイブ!決定的瞬間です!
そして、すごいのはこのダイブしているときのホッキョクグマさんの表情。「やった~♪」みたいな何とも言えないいい顔してるんですよね。

この本は、子供向けの写真絵本ですが、写真集として見ても、動物好きをうならせるようなお写真がたくさん掲載されています。ほんと素晴らしい。

もちろん子供たちにもぜひ見てもらいたい!今度、姪っ子が遊びに来たら一緒に読みたいな、と思います。たぶん彼女も喜ぶはず。

福田さん、素晴らしいご本、本当にありがとうございました!

file.29 すずめやの「どらやき」


いちにちいちあんこ

私は夏生まれなのですが、夏の暑さにはめっぽう弱いので、この数日は相当ポンコツになってます。できるだけ外に出ないよう心掛けてだらだら過ごしておりますが…。

とはいえ、この土曜日。どうしても資料を探しに行かなくてはならない、そんなタイミングがやってきました。

いろいろ考えて、ジュンク堂池袋に行こう、と決めましたよ。
ジュンクさん自体とても好きな書店さんですけど、もう一つ、あんこ好きにとっては強力な動機づけになるあのお店がそばにあるからです。

そうです。すずめやさんです!

すずめや

ジュンク堂左側の道をずんずん進んでさらに左の横道に入るとひっそりとこの名店が佇んでいます。

お店としては新しいですよね。10年くらい前に開店されたんじゃないかな。だけど、あんこ好きだったら、まあ間違いなくチェックしてるお店です。

久しぶりにこちらのどらやきを食べられる、と思ったら俄然やる気になりました。

こちらでは、どらやきのほかに、最中と茶玉、季節の練り菓子など、4種類販売されてます。品目が少ないというのが何となくまたさすが、というかなんかいいなあと思っちゃったりしますね。すみませーんと呼びかけると、若いご主人がわざわざ奥から出てきて応対してくださいます。

茶玉は売り切れだったので、とりあえずどらやきと最中を3個ずつ…とオーダーしてお財布を観たら……
お財布の中に200円しかない…><。銀行でおろそうにもそばにATMがない…。
#私のカードは静脈認証なので、コンビニだと下ろせないのです。

さらに、そのあと打ち合わせがあるので、時間もない。仕方なくどらやきを一個だけ買いました。なんかもう、自分にガッカリです。

どらやき

これがその一個(150円)です!ふお~、美味しそう!

どらやき

おおお、いいかんじ。ふっくらとしてて、なんとなく全体的にコロンとした印象。たまらないです。

どらやき

皮はしっとりふっくら。あんこも小豆が上等なのがよくわかります。そして甘さ控えめで美味しい!
一口で言うと、全体的に上品な印象です。どらやきらしいボリュームはしっかりとありますけどね。

また、これをお土産とかでもらったら、本当にうれしいですよね。

そうそう。
以前、仕事で人を紹介してほしい、と知人に頼まれたことがあったんですけど、それはかなり面倒なお願い事でした。でも、忙しいはずの知人がわざわざ会社までやってきて、こちらのどらやきを20個くらい持参してくれ、「悪いけど頼む!」と言われた時、私は思い切りどらやきにつられてOKしてしまいました。

「こいつ、やるなあ」。その時、その知人の評価が3段ぐらい上がっちゃいましたね。

私があんこ好きだと知っていて、忙しいのに、「本当に美味しいどらやき」をわざわざ池袋まで買いに行ってくれた(世田谷在住で会社は品川だから何かのついでというのはあり得ません)。これはなかなか、できるようでできないことです。見事にやられました。

それくらい、本当に美味しいどらやきなのです!

すずめや
http://www.d-suzumeya.com/index.html

 

file.28 板倉屋の「人形焼」


いちにちいちあんこ日曜日は三越前の三井記念美術館で開催中の「大妖怪展」に行ってきました。「三越前」という駅名だと分かりにくいかもですが、このエリアはすべての街道の起点となっている「日本橋」すぐそば。つまり江戸時代では超一等地ですよね。
三越本店、三井本店をはじめ、たくさんの老舗が今も軒を連ねています。大きなビルになってしまっているので「老舗街」と言われてもちょっとピンと来ないかもしれませんけど^^;。

大妖怪展を観終わった後、そんな雰囲気を味わいたくて人形町まで散歩してみました。今回一緒に行ったのは「面白いもの好き」な旅をよく一緒にしているメンバーなので、こういう街歩きもたちまち「発見」の嵐になります。

路地に入って小さなお稲荷さんにお参りしたり、注染で有名な手拭屋さん戸田商店を発見したり。戦前の長屋をベースに異様に成長?してしまった古い長屋を見つけてみたり…。

一時間半かけて人形町の甘酒横丁につくと、もう夜になっていました。日曜日なので早じまいか定休日でお店はほとんどやっていません。そんななかで、ひときわ目立つお店を発見。

人形焼本舗「板倉屋」さんです。
これはちょうどいい!と人形焼、ゲット!

ところで、人形焼、というと浅草の印象が強いですが、本来この人形町が発祥の地だって知ってました?しかも、帰ってから調べてみて分かったんですけど、この板倉屋さんの初代が考案して発売したのが最初だったんですよ!知らなかった~~。

板倉屋さんの看板こちらが昔の看板とのこと。「写真を撮ってもいいですか?」とお訊ねすると、
「どうぞどうぞ、中のほうも見てみてください」
とご主人。焼き場も見せていただいちゃいました。
焼き場もう遅い時間でしたので、焼いていらっしゃいませんでしたけど、いつもここで焼いてるんだそうですよ。左の壁一面に焼き型があります。すごいですね。
焼型さらにさらに。お忙しい手を止めて、焼き型も見せてくださいましたよ!(ご主人はじめ皆さんが本当に親切!)

HPによりますとこちらで販売している人形焼は、6つのお顔があるんだそうです。
『布袋尊、弁財天、恵比寿、毘沙門、大黒天、寿老人、弁財天を表しています。6人しかいない七福神にお客様の笑顔を足して、七福神にしてあげてください。』(HPより抜粋)
おおお、なんかしゃれてますねえ。

そして、いろいろ悩みましたが、時間もなかったので五個入りを買いました。
人形焼シンプルですが、なんかしゃれてるでしょ?いいかんじ。
人形焼わあ、かわいい!誰が誰だかはちょっとはっきりわからないですけど、前列の左は毘沙門さんで、真ん中は布袋さん?ううう、見分けがいまいち…
人形焼こしあんがたくさん入ってます!
うわあ、美味しい!

ねっとりと濃厚。でも甘味は適度。丁寧に作ってらっしゃるのがよくわかります。

皮がはちみつと卵の風味がはっきりとしているので、こしあんもしっかりと風味がないとバランス崩れちゃうだろうなあ。絶妙なバランスです。

5個で500円って、大きさの割にちょっとお高い?なんて思っちゃいましたが、さにあらず。しっかりとしてるので、一個でも十分満足感があります。丁寧に作られているからでしょう、既製品の人形焼とは別物。ちょっとしたお持たせでさらっとこういうものを用意できると、なんだかおとなな気がするなあ。いいなあ。

板倉屋
http://www.itakuraya.com/

file.23 時屋の「どらやき」


いちにちいちあんこ
今日は新宿西口にて秘密のMTG。いろいろ面白いことが始まりそうで、これからがとっても楽しみ!

ウキウキしながら、新宿を歩いていて…。

あ、そうだ、新宿西口といえば……、「久しぶりに例のあれを買おう」とちょっと足を延ばしました。どら焼き時屋さんのどらやき!!!

そうつまりこれは…
日本出身の世界的有名人、いえ、有名ロボットのあのひと縁のどらやきなのです。

そうです!このひとです!
ドラえもん                     ボ~ク~ド~ラ~え~も~ん~~~~

(20年以上ぶりに書いてみたら思ったよりうまくかけた)

有名な話なので、ご存知の方も多いかと思いますが、ドラえもんのなどら焼きは、「時屋のどらやき」なんだそうですよ。

もはや都市伝説と化してますが、西新宿にスタジオがあったので、作者の藤子不二雄さんはよくこちらのどらやきを召し上がっていたそうで。真偽はともかく藤子先生が愛してやまないどらやきだったことは間違いないそうです。
どらやきこちらは、「小」180円。ほかに、中、大、特大サイズがあります。一般的な大きさはこの「小」ですね。これ一個でもう十分おなかがふくれますよ。
どらやきどうです!?この角度!!
私にとって、「ドラえもんのどらやき」といえば、このアングルですよ!!
どらやき
あんこはもちろん粒あんです。

お味のほうは、もう、本当に昔懐かし、「王道のどらやき」と申しましょうか。ふっくらとずっしり重い生地、しっかりとした甘さのあんこ…。

誰が食べても、ああこれがどらやきだよね、とうなずくに違いないお味です。

ちなみに時屋さんは甘味どころなので、イートインもできますよ!イートインだと生クリーム入りのどらやきも楽しむことができます。そちらも、正しく美味しいです。ど直球!

場所は、新宿西口の小田急ハルク一階(小田急の方に伺ったところ、正確にいうと、小田急ハルクのお隣ですが並びなので同じ建物内に見えます、とのこと)。
あのあたりは、地下を移動することが多いので、意外とご存じない方もいるかと思いますが、ぜひ一度足を運んでみてください。ちょっと懐かしい感じの甘味どころです。

時屋
http://tabelog.com/tokyo/A1304/A130401/13006696/

 

イシブカツvol.9 東京真ん中編⑤山縣さんちの石もの〔後篇〕(椿山荘)


イシブカツ


世紀の大発見

さて、椿山荘といえば、大変有名な石灯籠があります。江戸時代から高名だった「般若寺燈籠」です!
般若寺燈籠

かっこいい!!!
素晴らしい調和感と、存在感。やっぱし本物は違うって感じですよ!

さて、この石灯籠、椿山荘のサイトを見ると「般若寺型石灯籠」とあります。「型」というのは、原型となる名物燈籠(これを「本歌」と言います)があり、それを写したもの、という意味ですね。
般若寺の灯籠というものも、実際に奈良の般若寺には般若寺燈籠(上の写真です)と呼ばれるものがあったので、椿山荘の灯籠は、写しという位置づけだったのですが(というよりも忘れ去られていた、と言ってもいいのかな)、石造美術界の巨人、川勝政太郎博士がこちらのほうこそ本歌ではないか、と「再発見」したのでした。

名物・般若寺石灯籠
川勝博士が、椿山荘でこの石灯籠を「発見」した時、この石灯籠は、なんと庭の隅のほう、プールわきに狭いところに無関心なまま置かれていたそうです。

なぜこの石灯籠が、椿山荘にあったのか、来歴はよくわからないそうですが、これだけ素晴らしい石灯籠を、庭好きの山縣公がわからないわけがないと思います。これが般若寺の本歌だということは知らなくても、この石灯籠の素晴らしさを知って、大枚はたいて購入したんじゃないでしょうか。でもその後ほかの人の手に渡るうち、よくわからないまま、放置されていた、ということかな、と想像します。

現在では、庭園全体の修復・再調整も終わり、丘の上の、三重塔の左わきのなかなかいい場所へ移されています。よかったよかった!
#数年前前ではもう一段低い、狭い場所に置かれていてちょっと悲しかったんですよね^^;

「寺社」の灯籠と「庭」の灯籠
ところで、この「灯籠」というものなんですが、灯りをともす器具ですよね。そこまでは間違いないんですが、石灯籠というもの、その本来の目的を知っておくと、視点が変わってくるのでちょっと補足しておきます。私もこのことを師匠N先生に教えていただいて、目から鱗が落ちる思いがしました。

もともと、この灯籠は、「仏さまへの捧げもの」として設置されていました。ですからこの灯りは、仏さまの正面に捧げられるというスタイルが、本来正しいのです。
東大寺大仏殿たとえば、こちら。大仏殿の写真ですが、その正面に有名な国宝・金銅八角燈籠がどーんとありますね。これ、これ、このスタイルです。こちらは石製の灯籠ではありませんが、意味は全く同じ。この灯籠の灯りは、大仏さんに捧げられているわけですね。
秋篠寺こちらは秋篠寺の本堂です。こちらも正面に石灯籠が一基おかれています。

奈良に行きますと、このような「正面一基」のスタイルのお寺さんがほとんどです。もちろん関東や、ほかの土地でも古い歴史を持っている、もしくは灯籠の意味をよくご存じ、というお寺ではこのようなスタイルをとっておられますね。

いっぽう、よくみられる「両脇に分かれて」おかれているスタイルは、割と後代になってからのスタイルだそうです。こちらはどちらかというと、参拝している人々の手元や足元を照らす、という意味合いになり、こちらは人を主役にした配置、と言えましょうか。

「加飾」大盛り、見切りの「美」
…と、灯籠についてちょっと語りすぎてしまいました^^;。今回は、「イシブカツ」ですから、実際に拝見したものについてご報告していきましょう。

般若寺石灯籠の魅力は、「バランスの妙」だと思うのです。

いろいろ好みはおありと思いますが、私の場合、石もので「わあかっこいい」と思うものは、デザインがシンプルで品と存在感があり、広がり・奥行きを感じさせるもの…なのですが、この石灯籠を見ていると、「シンプル=品がよい」というのも安易な考えだわ、ということに気づかされます。
般若寺燈籠ちょっと寄ってみてみますと、実はこの石灯籠、ものすごいデコラティブ。

笠にしても火袋(灯りを入れるところ)、その下の中台にしても、とってもデコラティブですよ。笠の蕨手もくるりんと見事にまいてますし、火袋の四面には、牡丹、獅子、鳳凰、孔雀が浮彫されています。

普通、これだけ要素を入れこもうとすると、なんだか「やりすぎじゃない?」みたいな気持ちになってしまうんですけど、この灯籠を見るとそういう風に思いません。
つまり、『調和が取れてる』ってことなんですね。何か一つ突出して見えている、というのはつまりバランス悪い、ともいえるわけで。

しかし、この灯籠はざっくり全体を見るだけで、ああすっきりとして美しい灯籠だなあ、とまず思います。で、じっくり見てその飾りの多さに驚く…という感じ。なんだか作り手の「してやったり」笑顔が浮かぶような気がしますね。

本歌ならではの躍動感と力強さ
ちょっと火袋の浮彫を見てみましょう。獅子後ろ足を跳ね上げてすごい勢いの獅子(右)。
孔雀と鳳凰孔雀(たぶん;左)と鳳凰(右)。
この神獣たちも、いい感じですよね。すごく生き生きしてますし、結構リアルな表現です。

「むとうさん、ここ、ここに注目!」
孔雀の脚石造センパイは、孔雀の脚の部分を指さしました。

「この孔雀の脚、画面を飛び出して下の格狭間(こうざま)のところまで伸びてるでしょ。川勝さんは、『枠を飛び出してしまうこの勢いこそ、本歌のしるし。写しだとこうはできない』といったんだって。確かにオリジナルじゃないとこうはいかないよね」

なるほど!

確かに、ふつうは、はみ出しちゃうなんてありえないです。でも、あえてそこを逸脱することで、枠に収まりきらない躍動感が出てきている。生きている鳥のようです。
模造品を作ろうと思う側は、なかなかこういう逸脱したことってできないのかもしれない。

「般若寺にある写しだと、枠の中に収まってるんだよ」

なるほどな~~。深いなあ。
川勝先生は、モノを作る人の心もちやスケール感をよく理解されてたんですね。そういう美意識を持ちながら歴史的にこういったものを見ていく、というそういう学者さんだったわけですね。

それにしても、この石灯籠は素晴らしい。堂々としていて、でも繊細、…でも力強くて品がある。カンペキですね。

ふほおおお。

ため息をつく石造センパイと私。

こういういいものを見せていただくというのは本当に幸せです。まさに眼福。
すっかりと幸福感に満たされて、今回のイシブカツも無事終了したのでした。

(終わり)

file.18 新潟県の「笹だんご」


いちにちいちあんこ

今日は、東京国立博物館へ『大神社展』を観に行ってきました。

大神社展についてはまた後日ご報告したいと思いますが、とりあえず、今日は本日のいちあんこを。

トーハクへ行くまでの上野公園で、「えちご長岡・佐渡広域観光フェア」というのを開催してまして、おいしそうな食べ物がふんだんに売られていました。

実は、その前に、とんかつ山家でロースカツ定食を食べて、おなかははちきれんばかりの状態になっていて、ちょっと食べすぎたことを後悔しつつ歩いていたのですが…

ほわほわほわ~と湯気が…湯気が……。

大好物・笹団子を蒸しているではありませんか!

お、おなかは一杯ですけどこれはスルーできません。
しかもばら売りしてて、一個100円。これくらい食べられるでしょう!あんこ者の責任として!とばかりに一個購入(大げさ)。
笹団子これです!

友人とトーハク前で待ち合わせてたので、トーハクの門前でおもむろに取り出して…

笹団子二口で完食しました!♪

いや~、美味しゅうございました。

しかし、申し訳ないことに、買い食いしたためにこの笹団子を作ったお店の名前がわかりません><。よほど慌てていたようです。とほほ。

 

file.17 にいがた本高砂屋の「醤一位 銅鑼焼」


いちにちいちあんこ
昨日は、打ち合わせで東京駅に行ってきました。
東京駅といえば、ほんとにいろいろ変わりましたよね。おしゃれになりました。

最近TVなんかで見かけるKITTEの前を通りかかったので、何かおいしいものはないかしら、とウロウロ。そしてこちらの銅鑼焼きをみつけました!
醤一位

「すべて試食できます。お気軽に試食お申し付けください」

と書かれていたので、遠慮なく試食させていただきました。こちらの銅鑼焼きは、生地に醤油を使っているのがミソらしいですよ。「山崎醸造の醤油使用」と書かれています。
調べてみますと、新潟県下ではかなりメジャーなお醤油なのかな??

口の中に入れると…おおお!確かに醤油がいるいる!
確かに醤油味というか、みたらし団子的な方向の香りと味がしますよ!かなりしっかりした濃い味ですが、生地は軽めでふわふわなので、なんだか不思議な感じ。
醤一位ちょっと変わってて面白いので、さっそく家族の分も購入。みんなでいただきました。かなりのボリューム感。

あんこのほうも、わあ、これは美味しいですよ!

醤一位
お店のHPによりますと、こちらの工場のお水は超軟水なので、豆が柔らかくふっくら炊けるんだそうです。

甘さもかなり控えめです。生地のほうがかなり強めに甘辛いので、バランスを見てるからだろうなあ。

美味しゅうございました!

にいがた本高砂屋
http://www.niigata-hontaka.com/product/dora.html

 

イシブカツvol.9 東京真ん中編④山縣さんちの石もの〔前篇〕(椿山荘)


イシブカツ
山縣有朋さんという人
大倉集古館から来た道を戻り、溜池山王駅から地下鉄で江戸川橋駅へ。

江戸川橋からは徒歩で椿山荘へ向かいます。
椿山荘は武蔵野台地の東縁上にあります。そして東京のど真ん中とは思えないような自然が今に残されている場所なんです。

古くからこの辺りには椿が群生していて、南北朝時代ごろまでは「つばきやま」と呼ばれていたそうです。1878年に明治の元勲・山縣有朋公爵がこの場所を購入し、自邸として「椿山荘」と名付け、その後藤田平八郎男爵に譲渡され、ホテルとして開業するに至りました。

山縣さんは、政治家で軍人。イメージとしては「妖怪」「フィクサー」という感じですけど、文化面ではお茶人としても高名です。
大変な趣味人で、特に作庭を好みました。京都の作庭家・植治(7代目小川治兵衛)さんと作り上げた明治の名庭「無鄰菴庭園」(京都)をはじめ、「古稀庵庭園」(小田原)と、今回ご紹介する「椿山荘庭園」の三つを「山縣三庭園」と呼ぶくらい、多くの庭を作っています。

近代主義的で自然主義的な、新時代の日本庭園
山縣さんの好みは「近代主義的で自然主義的な」庭園であったと言います。それまでの主流であった、抽象的な「わびさび」な世界ではなく、自然を自然としてあるがままに、写実主義的に心地よい空間を作りたい、というのが山縣さんの考えでした。

無鄰菴の造園について後年山縣さん自身が語った言葉というのが残されています。(以下『植治~7代目小川治兵衛』白幡洋三郎監修・京都通信社 から要約を抜粋)

「この庭園の主山は東山であり山麓にあるこの庭園では、滝も水も東山から出てきたようにデザインする必要があり、石の配置樹木の配植もおのずと決まってくる」

ほほ~~。すごい。コンセプトに揺るぎがないですよ。まさに写実主義です。
それにしても本職・軍事&政治家の彼が、こんなにも明確にデザインの意図を持っていたなんて、驚きます。相当な才能です。そして本当に造園が好きだったんでしょうね。
好きだからこそでしょうか、細かい具体的な部分にも考えをめぐらしています。

「滝の岩の間にシダを植え、ツツジを岩に付着するように植える。地被としては苔でなく芝を用いるとともに、樅・楓・葉桜を植栽の中心とする」

植栽にまで指示を出しています。すごいなあ。

以上の抜粋は無鄰菴についてのものですが、椿山荘も同じように山縣さんは取り組んだはず。椿山荘は小石川在住の作庭家・岩本勝五郎さんという人と一緒に作ったらしいのですが、この岩本さんに関する情報はちょっと見つけられませんでした。でも、仕上がりを見ると相当力のある、当時は有名な方だったことは間違いありません。

椿山荘も、山縣さん好みの、自然をダイレクトに取り入れた美しい庭園です。

石造美術のクオリティは東京ナンバーワン!
さて、そんな山縣さんのお庭です。石ものも素晴らしいものがたくさんあって突っ込みどころ満載。とてもじゃないけどあれですので、今回はご紹介するものを限らせていただいちゃいます。
織田有楽斎の層塔まずはこちら!
この十三層塔は、お茶人として高名な織田有楽斎(おだゆうらくさい)ゆかりの層塔です。
織田有楽斎さんは、織田信長の弟で、千利休のお弟子だった人(利休十哲の一人)。身近なところですと、東京の有楽町は、昔あのあたり有楽斎の屋敷があったので名づけられたんだそうですよ。
層塔そ、それにしても遠い~~
ちょっと前までは、丘の上にあり、ものすごい近くまで近づくことができたんですけど、最近庭園全体を修復したみたいで、なんだかえらい遠くに行ってしまいました。なので写真がうまく撮れません^^;。残念。

こちらの層塔は、一部寄せてあるみたい(パーツごとに時代が異なる)で、古い部分は鎌倉時代のものだそうです。
全体的に姿がよくて、品がありますね。
青面金剛像そして、こちら。「庚申塔」です。庚申塔は道教由来の「庚申待ち」が基になってたてられているものです。『日本石造美術辞典』(川勝政太郎著)を見てみましょう。

「庚申待・・・・・・庚申の日に夜寝ると、人間の体内にいる「三巳虫(さんしちゅう)」が抜けだして、帝釈天にその人の悪事を告げるというので、本尊を祀り寝ないで庚申待ちをするという民間信仰をいう」

そんなわけで、この日は村中みんな寝ないで勤行をしたり、お酒を飲んだりして過ごしたんだそうですよ。結構楽しそうですよね。

青面金剛
さて、こちらの方、名前を「青面金剛(しょうめんこんごう)」という仏教の神さまです。
庚申待ちではこちらをご本尊としたことが多かったみたい。

青面金剛さんは、もともと人の生気を吸い、血肉を食べ、病をはやらす悪神でしたが、太元明王に降伏してからは善神になり、逆にそういったことから人を守るようになったそうです。
それがいつの間にか、道教系の庚申待ちのご本尊になって民間で信仰されたわけですね。

こちらの青面さん、かなり好きです。
よく見ますと、手に蛇持ってたりして強面ですけど、全体の線がかわいいですよね。そしてきれいです。青みがかった石と相まってなんだかとってもいい感じ。関東っぽい。
こちらの庚申塔は、江戸時代初期ぐらいのもので、椿山荘が立つ前からこの場所に立っていたと考えられるんだそうです。まさにこの土地の守り神。そういう存在をちゃんとこの場所に残されてるのは、さすが山縣さん、わかってるなあ。

(続く)