「何もない」問題について


先日の新潟旅がとても楽しい時間だったので、その後も新潟県民のかたがたのtwitterをちろちろ拝見しておりました。

すると新潟県民どうしのやり取りでちょっと気になった発言が…。

「新潟には何もない」
「関東にばかり意識が行ってしまう人が多い」
みたいなこと言い合っちゃってたんですけど、へえええ、と思いましたね。 何もない、新潟に??マジで??あんなにすごいところなのに??!…と思いましたよ。

関東の中で最も地味といわれちゃう埼玉県民としては、いろいろ共感部分は多いんです、そういいたくなる気持ちもわかります。

でも私は歴史から起こしてその土地を見る癖があるもんで、また見えてる風景が違うのかもしれない。 時代によって栄える場所というのは結構変遷があります。今栄えていても、100年前は狐が住むような薄野だったりするわけで、もちろんどちらが上、下という話ではありません。

例えば、7世紀くらいの日本地図で東日本を見ると、東日本で一番の都会は茨城県のあたりから群馬、埼玉北部中部、東京都北部あたりになるんじゃないでしょうか。 もっとひいてみると、6世紀初頭ぐらいの越の国(新潟は越の国のもっとも北に属します。ここでは広義の越の国という意味で)はある意味天下とってるし。越の国出身の継体帝とかね。

新潟って、その後も、上杉謙信とか、幕末の河井継之助とか、山本五十六とか、田中角栄とかいろんなすごい人がいますからね。すごいっすよ、ほんと。こないだ行ってつくづく思いましたが、歴史の重層的なところといい、江戸時代からそれ以降の豊かさによる文化の蓄積といい、はんぱないです。何もないって何の話ですか?みたいに思います。

新潟市内 (写真はホテルから一望した新潟市内。ほかの国だったら首都ですわ。そもそもこの都市レベルすごいと思うけどなあ。)

そういう話を聞くたびに思うのは、気づいてほしいなあ、面白がってほしいなあ、ということなのです。足元にある地面が実は見たままではないことを…。

新潟県民だけじゃないですよね。いろんな土地の人に言えると思うのです。

例えば、私が今住んでいる家(埼玉県中部)が建っているところは単なる住宅地ですけど、弥生時代からずーっと住宅地だったんですよ。何気にすごいと思うんです。見た感じではわかりませんけどね。まず、「人」の歴史という側面から見てもそんなふうにいえます。

そして、イキモノ的視野からもいろんなことが言えます。一見単なる土が広がる地面に見えても、そこに生えている「雑草」には実は美しいなまえがあるのです。そして無数の微生物や虫、さらには小さな哺乳類もいるのです。そしてもちろん大きな哺乳類・人が住んでいます。

またその土の組成もちょっと変わっているかもしれませんよ。地質学の人から見たら「お宝だ!」と騒ぐものかもしれません。地球史的に考えたらすごい何かがあるかもしれませんよ。

私は、そういうことに気付いていきたい、と思うのです。…小さいことですよ。とっても。 でも、そういうことに気付いていけるのって、すごい豊かだと、私は思っているのです。

「何もない」 という言葉があるとしたら、それは謙遜であってほしい。そう願ってやみません。

file.40 麩の吉井の「ちょうじ麩最中」


 

いちにちいちあんこ

近江の国に取材に行った友人Sちゃんが、またもやお土産を買ってきてくれました。 その名も「ちょうじ麩最中」。近江八幡の名物である「丁子麩」を使った和菓子です。

近江、っていいですよね。

私、大好きで、2度はお仕事で、もう3度は単独で行ったことがあります。近江の国、っていうか滋賀県は、特に関東の人間にとってなじみのない県かな、と思いますが、古いものが好きな人間にとっては、まさにパラダイスです。

古代史好きにも中世史好きにも、戦国好きにもたまらない土地ですよねえ。ねえ。

近江八幡は長命寺がありますし、また、水路が通る町はとてもきれいです。ゆったりしててね。いいんですよなんとも…。近江商人の町としても有名ですよね。

ちょうじ最中
前置き長くなりましたが、これがそのちょうじ最中ですよ! ピンク色の包み紙をとってみると… こんな構成!ちょっとびっくり!左が皮になる丁字麩のパッケージで、右があんこです。

Sちゃんが「あんこはあとから乗せるタイプでサクサクしてて美味しいよ」と言ってたので心の準備はしていましたが、こういうスタイルというのはちょっと初めて。 最中でも、あんこ後のせって結構ありますけど、あんこは羊羹みたいになってる場合が多いですよね。これはほんとに普通の粒あんです。
ちょうじ最中
さらに、ちょうじ麩の間には、黒ゴマペーストが縫ってありまして……

ちょうじ最中

ここに、さらにあんこをオン!

ここでふと気づくのは、皮とあんの比率が普通の最中ではありえない比率だということ。 いうなれば、丁字麩のサンドイッチってかんじですよ。

ちょうじ最中

あ、ちなみにこの丁字麩は近江の名産で、ここの領主であった豊臣秀吉が「丸い麩は持ち運びにくいから四角の作ったら?」という提案から作られたそうですよ。写真に見えるような線は街の小道を表してるんだそうです。

味のほうはというと、この最中はとにかく「丁字麩を味わう」のが目的のお菓子だということがよくわかります。風味が一番立っているのは黒ゴマ、粒あんはつなぎの役割という感じですね。とにかくサクサク軽い丁字麩が美味しい最中です。

さすがお麩屋さんの和菓子ですね。

麩の吉井(吉井製麩所)
http://tabelog.com/shiga/A2503/A250301/25003993/

 

file.39 高田屋餅菓子店の「笹団子」と「お団子」


 

いちにちいちあんこ

新潟市から帰ってきました!……と言っても、帰ってきたのおとつい。
さて、新潟でのあんこ生活をご報告しましょう!

…と息巻きたいところですが、ちょっと想像と違ったのが、思ったほどあんこものを見かけなかったんですよ。笹団子ぐらいしかないんです。もちろん、大福やお団子など普通の和菓子屋さんにうってるものは一緒にうってますけどね、なんていうのかなあ、テンションが弱めというかね…。

北陸といえば米どころで、餅文化がありますので、例えば山形なんか行ったらお餅パラダイスです。なんかもうどこ行っても美味しいお餅が食べられるんです。ツヤッツヤですよ。あんこも美味しいし。からみ餅やしょうゆ餅も美味しい。

たとえば、蕎麦屋に入ったら、まあ、まずお餅頼んじゃいますよね。蕎麦屋にももちろんつきたて餅が、一人前400円くらいで甘いのからしょっぱいのまであってですね、もう、本当に天国みたいなわけですよ。そばも美味しいし、いったい私はどうしたらいいんだろう、ってな感じです。(あんこというかお餅への愛を熱く語ってしまってますけども^^;)

そして、富山も石川も、福井も、特急電車に乗るときには、必ず〔あんころ餅〕的なものが350円くらいで売ってます。目立つところから、もうぐいぐいアピールしてきます。
なぜこんなことを知っているかと言いますと、かつて出版社の営業部員だったとき、北陸担当だったからなんですねえ。もう15年も前のことですけど^^;。

そこで私の楽しみは、移動中に食べるあんころ餅だったのです。本当に時間がないので、駅構内で売っている和菓子で美味しいものをいかに見つけるかが勝負でした。それが〔あんころ餅〕です。

新潟ももちろん営業範囲で、新潟市内と長岡市だけですけど、営業で廻ってました。あのころの記憶を手繰ってみますと…

新潟市から長岡の間であんころ餅的なものを買った覚えないな…。長岡から富山までも、…ない気がする。

富山(高岡)から金沢の特急では、…いつもあんころ餅買ってた!
金沢から岐阜への特急でも、あんころ餅にさらにプラスして和生菓子も買ってた!

そうだ、新潟では、あんころ餅なかったわ。思い出しました!

ちなみに、調べてみますと、あのあたりのあんころ餅は石川県の松任市の「あんころ餅」が元祖らしいんですけどね。

そんなわけで、前置き長いですが、あんこものを食べたのはお土産に買った高田屋餅菓子店の笹団子と、お団子だけでした。
お団子高田屋餅菓子店は、駅ビルに入っている支店です。本店は駅から割と近いところにあるみたいです。

今回、高速バスで移動していたので、バスに乗る前におやつとして、お団子二種買いました。まん丸のお団子にこしあんがたっぷり。みたらしも、関東のみたらしより甘みがかなり抑えめで醤油が効いてる感じ。

美味しくいただきましたが、なんというか、…普通?

三越新潟で買ってきた、魚沼産コシヒカリのおムスビを、この後に夕ご飯として食べましたが、ちょっと目が覚めるような、極まったおいしさでした!
なんだこれ、マジで桁違い、と思いながら、大きなおムスビを三個も平らげてしまった…。
…こういう驚きは、そのお団子には残念ながらなかったですね。

そして帰宅した翌日、笹団子もいただきました。
翌日なので、ちょっと笹が黄色くなってしまいました。
笹団子堅くなってしまったので、レンジでちょっとだけあっためていただきました。固くなるのは、余分なものが入っていないあかし。ウェルカムです。
笹団子あんこは粒あんを選びました。こしあんもありましたが、笹団子はヨモギ餅だし、なんとなく粒あんのほうが合うかなあと思いまして。

うううううん。普通に美味しいです。普通です。

すみません、けなしてるわけじゃないんですよ。私の好みもありますし、期待が強すぎるということもあると思います。だけど、あれだけ美味しいお米を作っている県なので、どうしても、どうしても期待しちゃうんです。東北、北陸各県は、どこ行ってもこの手のものが、目が覚めるほどおいしいという経験値も含めて。

もちろん、今回私が足を延ばせたのは、新潟駅周辺だけ。車でもっと郊外へ行ったり、新潟県ってものすごく広いですから、ほかの市町村に行ったらきっとあるんでしょう。うん。

とはいえ、出会えなかったのが悔しくて、帰ってきてから探してみたら、ありましたあ!!羽入というお店の「三色団子」というのが!!

今回バスだったので、駅の構内に入らなかったので見つけられませんでしたが、新津名物三色団子というのが構内の売店でうってるみたい。これはめちゃくちゃ美味しいそう!!

15年前には駅内で売ってたかなあ。初めて知りました。くっそ~~~

なんかもう、猛烈に悔しいので、お取り寄せしちゃおうかな…

高田屋餅菓子店
http://tabelog.com/niigata/A1501/A150101/15009329/

 

新プロジェクト「神仏探偵」、準備スタート!


 

よく日本には、『八百万(やおよろず)の神々』がいらっしゃるといいます。

日本人は、伝統的に木や岩、海、山…、すべてに神が宿っていると考えてきました。また、そういった日本古来の神さまと、外来の宗教(仏教など)の神仏が合体したりまた分身になったりして、習合しながらいろんな形でいらっしゃると考えます。

日本の文化は外来の文化を喜んで受け入れるというのが特徴かもしれません。新しく入ってきた神を受容し、一方でもともといた神も否定せずに形を変えて残し…、その「なんでもあり」が日本なんですよね。

私は個人的に、こういう多様性は大好きなんですけど、多様であるということは、一方でとても複雑な状況を生むことも意味します。ものすごく有名なのに、実はその正体がよくわからなくなっている神さまや、信仰がけっこうあるんですよね。

そんな「よくわからない」を、楽しみながら解き明かしちゃおうと、コラボプロジェクトを始動させるべく準備を始めました。その名も……

「神仏探偵」

プロジェクトです!

神仏の著作を多数執筆、編集されている本田さんと、本サイト代表のわたくしことむとうが始めるコラボ企画。手探りながらもワクワク、ドキドキです。
本田さんは、本カテゴリ記事で大プッシュさせていただいた『へんな仏像』の著者でらっしゃって、その記事をきっかけにお声掛けいただきました。ありがたいお話です、ほんと!

とはいえ、まだまだ準備段階。どんな風にコンセプトを固めていくかをつかむために、プレ取材をスタートしました。まだ皆さんにご報告する段ではないかもしれませんが、嬉しいので先走ってご報告です。

そんなわけで昨日は、記念すべき第一回プレ取材!東京都北区王子にいってきましたよ!

本田さんのご提案+ご案内で、有名な「王子稲荷社」「王子神社」を中心に、「お稲荷さん」についていろいろ取材しました。東京って、本当に奥深いですよね。王子ってサラリーマン時代に仕事で通っていた場所なんですけど、こんなに知らないことがあったなんてって感じです。
稲荷社(写真:装束稲荷)

とはいえ、謎は深まるばかりだったのですが、「わからないって面白い」主義なむとうとしては、大満足の一日でした。それにしてもお稲荷さんって、本当に謎な神仏ですわ…。

お稲荷さんと言ったら、狐を連想する方は多いと思いますが、お稲荷さんの本体がイコール狐、というわけでもないのです。キツネは本来、お稲荷さんのお使いとも乗り物とも言われます。
お狐さん(写真:王子稲荷社のお狐さん。「眉毛」があるとなんかおっさんぽい空気に)

 

……あれ??

じゃあ、お稲荷さんって神さまがいるの?それとも仏教の神さま??

それがですね。神さまでもあるし、仏教の神さまでもあるんです。
とにかく、お稲荷さんって複雑!ナゾの存在なのです!

こんなにも身近なのに、その正体がよくわからないっていうのは、よく考えてみたらおかしなことです。いったいどういうことなんでしょうか。

「神仏探偵」では、そんなナゾを探ってみたいと思っています。もちろん、尋ね歩く行程や、関係者の方、研究者の方にお話を聞く、そのこと自体を、皆さんと一緒に楽しめたらいいな、と思っております。

また詳細決まりましたら、ご報告させてくださいね。